敬老の日に寄せて
9月17日の「敬老の日」を含む三連休は、多くの行政区や福祉施設などで敬老会が催されました。私自身も敬老会会場でお祝いの言葉を述べさせていただきましたが、ご招待いただいたにも関わらず、おうかがいすることができなかったところもあり、心苦しくもあります。改めて、豊かで笑顔あふれる現在のわたしたちの暮らしの土台を築きあげていただいた皆様への感謝と敬意とともに、ご長寿とご健康を心より祈念申し上げます。
嬉野市では9月3日現在、75歳の高齢者が4787人。うち100歳人口は今年度中に到達する人を合わせて24人(内訳は男2人、女22人!)で、全国では7万人弱というかつてない状況となっています。ちなみに内訳の男女比では男2人、女性20人と圧倒的に女性が多く、全国でも同じ傾向を示しています。2007年生まれの子どもたちのうち50%が107歳まで生きる可能性があるとの試算もあり、「人生100年」は決して誇張ではなく、政府でもそれを前提に社会保障などの制度設計を進めています。
若い世代は「人生100年時代」をどのようにとらえているか、興味深い意識調査が示されていました。メットライフ生命のアンケートでは、「何歳まで生きたいか」という設問に対し、20歳代の回答平均は77・5歳をはじめ、50歳代以下ではすべての世代で現時点での平均寿命を下回り、「長生きを敬遠する」傾向が強いことがうかがえます。老後の資金や病気、社会保障制度の今後など、年を重ねることに漠然と不安を持っていることが要因と推測されます。
こうした意味では、今の高齢者のあり方や姿は、当事者だけでなく、現役世代の将来展望にも大きく影響していると言えるのではないでしょうか。老後の生活がかつてのように「人生の楽園」と想像できる社会であれば、誰もが健康長寿を望み、今を生きる現役世代が一生懸命働くことの大きな動機づけになるのではないでしょうか。
医療・介護の充実や安定的な福祉予算の確保、公共交通などの日々の生活支援など、市としての取り組みを加速させ、現役世代への安心にもつなげていく意味でも高齢者政策の重要性や責任は重いものになると痛感しています。そのうえで、高齢者世代の皆さんに1つだけお願いがあります。それは「夢や目標を持つこと」です。「人生100年」と考えたときに、「あと20年で1つ2つ成し遂げることがある」と考えて生き生きと過ごしていただくことで、従来の価値観や前提を大きく見直して人生プランを再設計していただきたいと思います。「もう一度思い出の場所に行ってみたい」「ひ孫をみたい」―。ささやかな願いで結構です。現役世代があこがれるほどにベテラン世代一人一人が光り輝き、健康で楽しく過ごすことが、個人としての幸せにとどまらず、若い世代への希望、ひいては社会の活力につながると信じています。
敬老の日を機に、若い世代も一緒に人生100年時代の構想をしっかり考えたいと思っています。