新幹線開業式典あいさつ

 

 台風一過の青天の下、西九州新幹線開業を迎えることができたことに無上の喜びを感じています。同時にここに至るまでの紆余曲折の中でご尽力いただいた先人、本日ご列席の関係者、すべての市民の皆様のご労苦を思えば、胸詰まる思いでもあります。


 令和4年9月23日。今日この日、嬉野市にとっては「百年の念願」が叶った瞬間であります。明治年間には、この嬉野の地にも国鉄延伸計画もありました。しかし、「客の素通りが心配」などの理由で反対の声が挙がり、有田-早岐経由の現在の佐世保線ルートとなりました。その後民間による鉄路整備も進められましたが、世界大恐慌や15年戦争の始まりとともに頓挫。延伸に反対したのは、当時の時代背景からすれば致し方のない面もあったのでしょう。しかし、昭和年間に編纂された「嬉野町史」には、「百年の悔いを残した」とつづられています。ゆえにわれわれ嬉野市民は幾星霜(いくせいそう)を経て本日に至るまで、この交通大変革を待望しつつ、遠大な未来構想を描いて参りました。


 そうです。新幹線開業は終着駅ではありません。今日からが新たな旅の始まりなのです。駅舎が立つこの地を拠点に、嬉野市の次の「百年構想」がスタートします。高速鉄道網とつながることでより広域の誘客が可能となります。山陽新幹線沿線の関西・中国への積極的なセールスを継続すると同時に、佐賀県西南部を一帯としたエリアとしての魅力向上に努めて参ります。在来線沿線の鹿島市、太良町と祐徳稲荷神社や海中鳥居をはじめとする霊験あらたかなビュースポットや豊饒の海・有明海を巡る旅、日本磁器発祥の地有田町と温泉駅同士でつながる武雄市とスクラムを組む「ありったけのうれしいを」での魅力発信、さらには県境を越えて佐世保市、波佐見、東彼杵、川棚の東彼3町との連携も視野に入れています。新幹線開業を「光」と「影」と表現する人もいます。なればこそ手を携えて共に光り輝く道を選びたい―。そう強く願っています。


 嬉野市の存在価値を高めていく取り組みも加速させていきます。現代を読み解くキーワードの1つに、「メタバース」と呼ばれる仮想空間の活用が挙げられます。本日駅舎と同時に、仮想現実の世界で嬉野温泉駅前を再現した「デジタルモール嬉野」、道の駅「うれしの まるく」ではVRゴーグルを活用した観光案内所となる「まるくアイズ」も公開されます。駅と温泉街との間を結ぶ自動運転車両の実用化と合わせ、近未来の姿を先取りしたまちの姿を描いて参ります。企業誘致やスマート農業の先進モデル構築、移住定住政策を通じて新しい時代を創造する力と意欲を兼ね備えたクリエイティブ人材の集積を図り、この国のイノベーションをリードするまちへと飛躍を遂げていきます。かつて長崎街道を往来する文物に恵まれ、磁器、酒造、製菓といずれも当時先端産業の集積地であった国重要伝統的建造物群保存地区「塩田津」の街並みを今に伝える私たちならば、幕末・明治維新の時代に「うれしの茶」を世界に向けて輸出しこの国を夜明けに導いた私たちならば、必ずやできると確信しています。この西九州新幹線を22世紀の長崎街道として子々孫々に誇れる存在するために努力を重ねて参ります。


 「うれしいをいっしょに」。嬉野の地でたくさんの「うれしい」を感じてください。市民の皆さんと共にたくさんの「うれしい」を生み出します。この鉄路の先に続く百年の輝かしい未来に向かって出発進行!皆さんと共に前途を祝しましょう。結びに安全施工いただいた鉄道運輸機構様、建設土木事業者の皆様に心よりの感謝を申し上げるとともに、JR九州様に安全運行をお願いして開業にあたっての祝辞とさせていただきます。本日は誠におめでとうございます。


令和4年9月23日 村上 大祐

 

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